特製の白無垢に思いを込めて
Pray for peace pictured on the wedding KIMONO(SHIROMUKU).
結婚式のために、自分のデザインで白無垢も制作しました。美しい菊の紋の鞘に納められた元帥刀を背負うように背中心にすえ、二本の水引で結ばれているように描写しました。刀を背負う覚悟はあっても、それは決して抜かずに済むように、夫婦の絆に始まる愛が、戦いを封じるように、との祈りを込めました。
元帥刀の周りには椿が咲き乱れ、その右手には湧水と嗣子脅しを配して、湧き出でる湧水が寿の文字を描くようにデザインしました。その原画を下図として布に転写いただくとき、画家で作家の山口椿先生が、つがいの鶴を書き加えてくださいました。とてもとてもめでたく、美しい世界を作っていただきました。
命と誇りを重んじるからこそ、戦う覚悟について目をそむけないで語り合わなくてはいけないと思います。誰だって死ぬのは厭です、自分だけならまだしも、愛する人が死ぬほど、耐えがたいことはない。だからこそ、覚悟もなく戦いに巻き込まれてはならない。平和に耐えることがまず第一に今求められる戦いの形です。そして万が一、戦うしかない時がきたら、私は儀のために戦いたい。儀とはつまり愛だと思います。愛することが平時であれ戦中であれ、そのまま命がけの戦いなのではないでしょうか。平和の中でたまたま夫と呼ばせていただける人に出会え、結婚の誓いをさせていただけるありがたみを、忘れないでいたい。現実にほんの数十年前に266万もの貴い命が失われたこともまた、私たちはいつも思い出して生きなくてはいけないと思います。
戦を思い、常に覚悟しておくことは、決して平和を軽んじることではなく、命への敬意と同義だと私は思うのです。その重みを見つめるためにこそ、私たちは刀を見つめ、戦いの歴史を見つめ、戦いの局面で人間がどれだけ残忍になれるかも知らなくてはいけないんです。そのうえで、決してそんな行いをしないよう、己を律しなくてはいけないのではないでしょうか。万が一、死や戦いの局面に出会った時にどうふるまうか、常に考えていなくては、咄嗟の時に行動にできません。東日本大震災の時もそうでしたが、私たちが日本人として、人間として、家族として覚悟を問われる局面は、どんなに避けようとしても必ずやってきます。戦争でなくても、私たちは日々人間としてのありようを問われているのだと思います。
2012年の終戦記念日に起きた不思議な出来事
The Miracle on the memorial day of the World warⅡ
そんなことを考えながら結婚式の準備を始めた2012年の8月15日、主人と一緒に靖国にお参りに行きました。戦没者追悼中央国民集会のテントを探すと、小堀桂一郎先生も中條髙徳先生もテントにいらっしゃいます。私は「結婚式、靖国で挙げさせていただけることになりました」と、テントの外からお声掛けさせていただきました。すると、お二人ともニコニコと手を振ってくださいます。
その日はとてもよく晴れていました。私は日光に過敏なので、少しだけイベントをみてからお参りして帰るつもりでいました。集会のプログラムはやがて、昭和天皇の玉音放送に移ります。すると、その場にいらした方はご記憶かと思うのですが、その玉音放送の間だけ、晴れにも関わらず、雨が落ちてきたのです。その雨はかなり勢いを増して降り、玉音放送が終わるとぴたりと止みました。私も主人も「なんて不思議な」と言いながら、手を結んで、そのまま参拝させていただきました。
©All Photos by Naoto Ohkawa.