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和の美をまとう引き振袖『美麗』誕生秘話

椿の着物を見たことがありますか?

Have you never seen a KIMONO TSUBAKI is drawn?

椿の葉は、花が咲く方向の逆側に向けてついている場合が多いのをご存じですか?

私は、静養のために住んでいた椿山荘の庭園から摘んでいただいた椿の花のスケッチをしている時に、そのことに気づきました。そして、「後姿にまで心が行き届いて、見えないところも美しくあろうとする日本人の美意識そのものだ」と、感じたものです。



私は、2011、2012、2013年の三回の冬を椿山荘で過ごさせていただきました。体調悪化で、冬の寒さに歩くこともかなわず、「寒さにさらされずに済む、大きなホテルで過ごしたい」と思ったのがきっかけです。さらに、ほとんど寝たきりであったことから、24時間のルーム・サービスやランドリー・サービス、町の喧騒から遮断されることなどが絶対条件でした。広大で美しい森の中にあるような椿山荘はそのすべてを叶えてくれ、さらに当時社長であられた末澤和政さまが、私の相談に快く応じてくださったことから、この名門ホテルでの信じられないくらいに贅沢な滞在が実現したのです。それは、どんな病院の集中治療室にいるよりも質の高い療養を可能にする滞在でした。

そんな中で私の将棋との縁を知ってくださった椿山荘の松山元信さまが、「名人戦の開幕戦が行われるので、もし気分転換に楽しんでいただけるのでしたら、ナビゲーターをお願いできませんか?」と言ってくださったのです。私は喜んで即座にお受けしました。羽生善治さんと森内俊之さんへの絵の贈呈もさせていただくことが決まり、私はその背景の資料とするため、ホテルにお願いして椿を数本手で折っていただきました。そのスケッチの最中に、私は冒頭の、椿の葉の付き方、美しさに気づいたというわけです。名人戦のナビケーターはその後連続して三年もさせていただきましたが、二回目の開幕戦前夜祭で黒地に赤い牡丹の振袖を着た私を見て、末澤社長が「それは椿ですか?素晴らしいですね」と言ってくださって。私は「残念ながら、牡丹なんです。椿ならもっと素敵ですよね。今度は椿のものを探してきますね」と、お答えしました。その時に私の脳裏に「椿の和服はあまり見ないけど、探すか、できたら作ってみたらどうかしら。椿山荘には本当お世話になっているから何かお礼がしたい。椿の花嫁衣装などを作ってプレゼントしたらレンタルいただけたりするかしら。自分で一回だけ着る振袖のためにお金をかけるより、みんなで楽しめるものにお金を使った方が素敵」という思いが浮かんだのです。

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